“天才”平手友梨奈とセンターを目指し続けた今泉佑唯の関係性。不仲ではない2人の関係とは【コラム】

今泉佑唯(写真提供:エイベックス・AY・ファクトリー合同会社)

欅坂46からの卒業後、エイベックス・AY・ファクトリー合同会社へと移籍した今泉佑唯の勢いが止まらない。舞台「熱海殺人事件」、映画、ドラマ、バラエティーと順調に活躍の場を広げている。そんな中で僕は一つの疑問を抱いていた。それはなぜアイドルでもなく、歌手でもなく、タレントでもなく、女優なのかということだった。理解しようと過去のインタビューを読み返したりもしたがはっきりとしたところはよくわからなかった。事務所の意向なのかもしれない。

インタビューを読み返していく中で再確認したのは今泉が繰り返し口にしていたセンターへの想いだった。それはメンバーの中でも特筆すべきことだった。ほかのメンバーからは「センターになりたい」という発言は全くと言っていいほど聞こえてこなかったからだ。

欅坂46加入前にはローカルアイドルとしても活動。その後はオーディションや様々なステージで歌い続けていた今泉にとってセンターは当然の目標だっただろう。しかし欅坂46のセンターに立ったのは、今泉ではなく、同じくアイドル活動を行っていた石森や鈴本でもなく、愛知からやって来たごく普通の中学生だった。

今泉はオーディションのときの平手について以下のように語っている。

「質疑応答のときも、しっかりとした意思の強い感じでした。『私はちやほやされたくてアイドルになりたいと思ったわけじゃありません』と言っていて、すごい!と思って震えちゃいました。だから、オーディションのあとの記者会見のときから『この子は絶対にセンターになる存在なんだろうな』と思っていました。オーラっていうか空気が違っていたんです。」

BRODY 2016年12月号

オーディションのあとの記者会見でフロントに立ったのは、左から今泉・平手・鈴本・梨加だった。今泉からすれば「次は真ん中に立ちたい」という思いがすでにあったのかもしれない。しかし、お披露目記者会見に続いて、デビューシングルでもセンターに立ったのは今泉ではなく平手だった。『サイレントマジョリティー』でのパフォーマンスについて今泉は平手との差を感じていたという。

「正直、自分と平手のパフォーマンスを比べてみると、すごく差を感じるんです。彼女は表現力もあるし、存在感があって、動画とかで見ていると『やっぱり平手がセンターだなぁ』って思うんです。でも、デビューシングルで平手が圧倒的なパフォーマンスをしているのを見て、『隣で支えたい』と言ってたら、いつまで経っても平手を越えることはできないなと思って。だから、いつか私も胸を張って堂々とセンターができるようになれたら……いや、なります!」

BRODY 2016年12月号

『サイレントマジョリティー』での圧倒的な存在感から、すでに「天才」「山口百恵の再来」「次世代のエース」と呼ばれることになった平手に対しても、今泉はセンターという目標を持ち続けていた。それは『サイレントマジョリティー』で、同じく平手の隣に立っていた鈴本美愉とは大きな違いだった。鈴本はとてつもないプレッシャーを背負うことになった平手を支えようとしていたからだ。

平手へ
15歳のお誕生日おめでとう。
まだまだ若いね。
最年少なのに自分を支えてくれて、メンバーを支えてくれてホントにスゴいなって思います。
1stシングルで成長し続けている平手を隣で見てて、私も頑張らないとって勇気をもらったよ。
人見知りな私を気遣って一緒にいてくれてありがとう。
今ではメンバーと話せるようになったよ。
平手とは映画にいったり、クリスマスにイルミネーションを見に行ったり、色んなとこに遊びに行って楽しかった。
また、行けたらいいなぁ。
ほんとは平手を支えなければいけない立場なのに、私が悩んでいたせいで支え切れなかったことを思うとすごく後悔しています。
でも、平手はずっと頑張り続けてて、今まで私の相談に沢山乗ってくれて、解決するように一生懸命考えてくれて本当に感謝しています。
だから、これからは私が平手の悩みとか聞くね。
平手より4年ぐらい長く生きているからそこそこアドバイス出来るはずです。 頼りないかもしれないけどたくさん話を聞くね。
欅坂のセンターとしてプレッシャーばかりだと思うのにいつもみんなを支えたり引っ張ってくれてありがとう。
私はいつでも平手の味方だよ。
ずっと大好きです。
みゆより

欅坂46個別握手会@パシフィコ横浜、平手友梨奈生誕祭 2016年6月26日

センターである平手を除き、最多5回のフロントメンバーに選ばれているのがそんな鈴本と小林由依だ。だが小林はそんな「自分が自分が」というタイプではない。冠番組『欅って、書けない?』でも開始当初はおとなしい存在で、その雰囲気に憧れた石森や織田が真似をして番組で話さなくなるほどだった。センターに対しても積極的に目指していたというわけでもなかったという。そんな小林も鈴本と同じような思いを抱いていたのかもしれない。

「正直、私はセンターを目指す今泉を応援してるようなタイプでした。」

BRODY 2018年2月号

後になって明かされたことだが、今泉の体調不良は2016年の夏から始まって、2017年4月6日に行われたデビュー1周年記念ライブの直前に休まなくてはいけなくなるほど悪化したという。2016年の夏といえばデビューシングル『サイレントマジョリティー』が大反響を巻き起こし、圧倒的な勢いで2ndシングル『世界には愛しかない』の制作に入った時期だ。その影響か2016年8月に発売された『世界には愛しかない』、11月に発売された『二人セゾン』、2017年4月に発売された『不協和音』でも今泉がセンターに立つことはなかった。

センター交代について平手友梨奈が語っていたこと

グループ結成当初、今泉と平手は共に「エース候補」と呼ばれる存在だった。

エース候補になりそうなのは今泉佑唯と平手友梨奈。今泉は小柄だが歌唱力があり、アイドルとして完成している感がある。一方の平手は素朴な印象だが、「星空のディスタンス」を力強く歌唱。審査員の1人は「すごくアーティストっぽい」とうなっていた。

月刊AKB48グループ新聞 2015年9月号

そのうち欅坂46のセンターに選ばれたのは平手だったが、一番目立つセンターポジションにあって、私が私が…と前に出ていくタイプではなかった。

次第に欅坂46の名前が全国区へとなっていくと、平手友梨奈の存在も「天才」と絶対視されていくことになった。だが、この状況に真っ先に戸惑いを覚えたのはそんな平手自身だった。平手は自分だけが注目されていく現状に不満を覚え、ブログでMV解説を行うときに自分以外のメンバーのよかった点について言及したりもした。自分が呼ばれたインタビューでも、その場にいないメンバーの名前を挙げたりもした。

皮肉というべきか、そんな平手の「自分だけではなく他のメンバーの事も見てほしい」という声ですら、平手の謙虚さをアピールしその評価を高めることになってしまった。

「なんていうか……平手だけが目立っている、と思われるのが怖かったんです。音楽番組に出演させてもらうとき、センターだからカメラに抜かれることも多いんですけど、それがちょっと苦しいなって思うときもあったりして。私ばっかり褒められても嬉しくないっていうか。私よりもいい表情だったり、歌が上手かったり、すごいパフォーマンスをしているメンバーもいるのに、どうしてなんだろう……って思いはすごくありました」

BRODY 2016年12月号

平手からすれば「センター交代」は「センターから降ろされる」ことを意味する。今までのアイドルの常識からいえば、それは悲しいし悔しい事だろう。どうして…と泣き出す子もいるかもしれない。しかしインタビューを読んでいる限りでは、平手自身はそのことをマイナスには捉えていていないように感じた。グループにとってはプラスになるとも考えていたようだ。

「この先、私以外の違う誰かがセンターに立つことになったら、また違う欅坂46を見せられると思うし、それはグループの幅を広げるという意味でも、すごくいいことだなと思っていて。」

B.L.T. 2017年5月号増刊

平手のこの気持ちは「小林に任せたほうがいいのかな(ロッキング・オン・ジャパン2019年4月号)」という言葉にあるように今も変わってはいない。センターにこだわる今泉とセンターにこだわりを持っていない平手。そんな対照的な構図は残酷的だ。

そして前述したようにグループの人気が高まるにつれ平手の評価も高まると、センターを目指し続けている今泉の発言はグループに波紋を投げかけようとしていると一部で受け止められてしまう。その雰囲気は確実に今泉の元まで届いていた。

「今もセンターになりたい気持ちはあります。きっと私がセンターになっても誰も喜ばないだろうなって思ったりもします。でも、なりたいです。」

BRODY 2018年2月号

休養後ついにセンターに立った今泉佑唯

約4か月の休養を経て欅坂46へと復帰した今泉だったが、2017年の全国ツアーを裏で見ているときに、「置いて行かれてしまった」という思いを抱いたという。これは乃木坂46をはじめ大人数のアイドルグループのインタビューでもたびたび見られた心情だった。そして乃木坂46の場合、そういうメンバーは卒業を選択することが多かった。

今泉も卒業をスタッフに相談していたというが、このときはグループへと復帰。依然としてセンターへの思いは持ち続けていた今泉は、休業中もボイストレーニングを行うなどパフォーマンスの向上を目指していた。そこには、今泉と同じ身長でAKB48のセンターに立った大島優子の影響があったという。大島に身長が低くてもセンターに立てるという勇気を貰った今泉の気持ちは固かった。

そして年が明けて2018年、今泉はついに欅坂46のセンターに立つことになった。「平手不在」「Wセンター」という2つの条件が付いていたが、待望のセンターポジションでパフォーマンスをすることが叶ったのだ。しかも『ガラスを割れ!』という最新シングル表題曲で、今泉の目標は叶うこととなった。

「シブヤノオト」「ミュージックステーション」「欅坂46 2nd YEAR ANNIVERSARY LIVE」でのパフォーマンスにセンターとして臨むことになった今泉は努力をし続けた。パフォーマンスを行う前にはしっかりと時間をかけて準備をしたという。それは「TAKAHIRO先生をはじめスタッフとも意見交換を重ねていた」という平手の影響でもあった。

「限られた時間の中で平手ちゃんを超えることはできないけど、振り付けのTAKAHIRO先生やスタッフさんと毎日のように何時間も話し合って最善の方法を探しました。」

EX大衆 2018年6月号

「平手ちゃんの影響も大きいと思います。平手ちゃんが意見を出していることを知って、「メンバーから言ってもいいんだ」と行動できたんです」

EX大衆 2018年6月号

そして今泉は小林の手も借りパフォーマンスを披露した。「平手不在にガッカリした」ファンもそのパフォーマンスをしっかりと見て、SNSに興奮のコメントを書き込んだことだろう。だがセンターポジションに立った後、今泉は欅坂46からの卒業を発表する。今泉はそのときの心境についてインタビューで以下のように答えている。

「2周年ライブが3日間終わった時に、すごい今までと違う感じの燃え尽き方をしてしまって。そこからしばらくしても燃え尽きた感が続いて、改めて『これは卒業なのかな』と実感したんです。」

別冊カドカワ総力特集欅坂46 20180918

今泉がセンターに立って見たものとは何だったのだろうか。グループへの加入時から目指してきた目標を達成することができて満足感や喜びもあっただろう。「燃え尽きた感」と本人が言っているように達成感もあったかもしれない。同時にそこには今泉が初めて感じることになる「センターのプレッシャー」が存在した。

「これに耐えてきた平手ちゃんは本当にすごいとしか言いようがないです。なんか私、今まですいませんでしたっていう気持ちになりました(笑)。センターに立ちたいっていう気持ちが前からあったんですけど、こんなにすごいものだとは思ってもいなかったので。」

別冊カドカワ総力特集欅坂46 20180703

センターに立った者しか感じることのないプレッシャー。アニラで『二人セゾン』のソロダンスを披露することになった原田葵も、レコード大賞・紅白歌合戦という大舞台でセンターに立つことになった小林由依も始まる前に涙を流していた。そのセンターの重圧は、今泉が卒業を固い意志で選択するほど重かったのかもしれない。

僕はこのインタビューを読んで、今泉がそれを振り返る時に無理やりにでも笑いをひねり出して語るしかないのかなと思ったが真相は知れない。「(笑)」という表現の強さをライターが理解していなかったのか、それとも本当にそのような口調だったのか…

“天才”平手友梨奈とセンターを目指し続けた今泉佑唯の関係性

RealSoundのコラムでは「今泉と平手の関係性は、才能の違いに苦しみながらも、そのことを受け入れ、自分の作品を見つめ直すという、まさに映画『響 -HIBIKI-』における祖父江凛夏と鮎喰響のようだと感じた。(欅坂46 今泉佑唯は新たな希望へと歩み始めた 卒業の真相語った各誌インタビューから感じたことhttps://realsound.jp/2018/09/post-256063.html)」と平手の主演映画『響-HIBIKI-』に重ね合わせた比喩が用いられた。

僕はこのコラムを読んで、「本当にそうだろうか?」と思った。

余談になるが、僕は欅坂46のメンバーがみんな好きだ。それでも「推しメンは?」と尋ねられれば「菅井友香と平手友梨奈」と答える。だからわざわざ言えば、今泉より平手のほうが好きだし、パフォーマンスも平手のほうに目を奪われる。(そしてこういう言い方を平手は嫌うだろうなとも思う。)

そんな僕からしても「この比喩はあんまりではないか?」と思えた。その表現は今泉と平手の間に差があり、しかもその差はとても大きなものだと言っているように読めるからだ。

確かに欅坂46のセンターは平手友梨奈であり、今泉佑唯の名前が選抜(フォーメーション)発表のセンターで呼ばれたことはない。その事実を差と呼ぶのはそうだろう。ただ、今泉はその差を特長やスタイルの違いと認識して、自分なりの戦い方を模索していた。それは『サイレントマジョリティー』のパフォーマンス時に「すごく差を感じるんです」と語っていた今泉が、年単位の時間をかけて成長しようとした結果だった

ー続けて聞きたいんですが、お二人から見て平手さんは追いつけない場所にいると思います?
(引用者中略)
「私もゆいぽんと同じで、平手が目指しているものと、私が目指しているものは違う気もしています。かっこいい系が平手だったら、私は逆で“アイドル”を目指していきたいと思っています。」

BRODY 2018年2月号

僕は今泉と平手の関係性は、映画『響 -HIBIKI-』における山本春平と鮎喰響のようだと感じた。 小栗旬が演じた山本春平の作品は何度も芥川賞候補作に選ばれるが、受賞作に選ばれることはない。作中では最後のチャンスと定めた小説も、響の前に受賞は叶わなかった。それでも彼は再び小説を書き続けることになる。

今泉は卒業後のメインの仕事を女優に定めた。一方“天才”平手友梨奈は初出演&初主演作で日刊スポーツ映画大賞と日本アカデミー賞の新人賞を受賞した。他の新人賞受賞者は何作も映画への出演経験がある俳優/女優ばかりで、一作目で新人賞を得た平手の“天才性”は権威にも認められたと言える。

今泉が欅坂46から卒業した後もしばらくは「元欅坂46」の肩書はついて回ることになる。欅坂46というグループ名から平手の名前を連想する人がいれば、今泉にとって同期の“天才”の存在は大きな壁になるかもしれない。それに『響』原作者の柳本先生が平手を指名したように役が回って来ないかもしれない。グループからの卒業後も“天才”とポジション争いをしなければならないとすれば、それは大変なことだろう。

しかし「何年も努力して書き続けて、ただ小説のことだけ考えて…」と山本春平が語っていたように、誰にもその人なりのやり方とペースがある。アイドルという舞台で、今泉は平手と違うやり方でセンターに立とうとしていた。卒業後の主戦場に選んだ女優の舞台で、今度こそそのやり方が成功することを祈っている。

3月3日、記事作成公開。
3月15日、加筆修正。

“天才”について語ったインタビューが公開されています

コメント

  1. カスタードほっぺ より:

    こんばんは。いつもサイトやツイート、楽しく読ませていただいています。

    今回のような考察記事はメディアサイトさんならでは故、特に気に入って読んでいます。
    ロキノンジャパンのあのインタビューについてメディアサイトさんが書いて下さるのを心待ちにしていました。
    ガラスを割れ!期間ではゆいちゃんずBRODYが大きな波紋を呼び、2018年は平手さんの言うように色々あった1年でしたね。正直あの時期はファンとしてどうあの事態と向き合えばいいか分からず、ずっと心がモヤモヤしていた事を覚えています。あれから一年…早い。インタビュー中、これは、という初出のエピソードが多く(そもそも彼女はあまり語らない故何事も新鮮に感じてしまうのですが)、一言一句が重く心に残り何度も読み返しました。

    私はReal sound記事と同じく祖父江凛夏×鮎喰響=今泉佑唯×平手友梨奈 視点で響を観ていましたが、メディアサイトさんでは山本春平×鮎喰響視点での考察。思わず唸りました。Blu-rayが届き次第、改めてそういった点に注目しつつ思いを馳せたいと思います。

    このタイミングでこの記事、流石です。
    これからもゆるりと更新楽しみにしています。

  2. 欅坂46/日向坂46のメディアサイト(仮) より:

    コメントありがとうございます!

    ジャパンの平手のインタビューはかなり読みごたえがありましたね。僕もあのインタビューと過去のインタビューを合わせて記事を書いてみたかったのですが、あのインタビューは全体を読んでこそ意味があるものかとも思い、どこか一部を切り取るのもどうなんだろう…とほんの少しだけ触れるにとどまってしまいました。

    おっしゃるように2018年は平手のメディアへの露出が少なく、月4、5回のSOLへの出演くらいでかなり心配して見ていました。負傷と外仕事が重なった結果だとわかって安心しましたが、いずれこの期間についても本人のインタビューが揃えば記事を書いてみたいですね。

    Real sound記事の祖父江凛夏×鮎喰響=今泉佑唯×平手友梨奈をちょっと僕はあんまりだなと思いました。山本春平のほうが合ってているだろうと。それは「BRODY 2018年2月号」のインタビューで今泉が平手と別路線でセンターを目指していたということが念頭にあったからかもしれません。引用しなかったのですが、それも書いたほうがいいかもしれませんね。ちょっと考えてみます。

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