謙虚な人・長濱ねる。その謙虚さは卒業する理由になったのか?【コラム】

『音楽室に片想い』MVより

長濱ねるは、謙虚だ。いつだって、自分にはまだ何もないと言う。だから、“ここから”が楽しみだ

長濱ねる1sr写真集『ここから』帯文

長濱ねるが謙虚な性格だという話はよく聞こえてくる。ねると一緒にアイドル活動をしているメンバーたち、TAKAHIRO先生やカメラマンなど関係者のみなさんは、彼女のことを「とても優しくて、良い子」だと口を揃える。

一度会っただけの人たちでもその印象は変わらないようだ。小説家の綾辻行人先生はねると対談した誉田哲也先生や辻村深月先生の言葉を紹介していた。

加えて、彼女と対談をした誉田哲也さんや辻村深月さんが、そろって「すごくいい子でしたよ」と言うものだから、このところ僕的にも、ねるちゃんの好感度が上昇中なんです。

別冊カドカワ総力特集欅坂46 20180918

僕はもちろんメディアを通した彼女のことしか知らないが、僕の持っているねるのイメージもその姿のままだ。勉強を頑張って県下有数の進学校に進んだ才女で、控えめな性格で前に出ていくわけではないが、バラエティー番組に出演すれば、笑顔を絶やさず収録をこなす。アイドルの先輩で言えば指原莉乃のようにいつでも気の利いたコメントを残せるわけではないが、その健気に頑張っている姿は多くの支持を集めたのではないだろうか。

2018年8月に放送された『ねるねちけいONLINE!』(NHK総合テレビ)にて、オアシズの光浦靖子さんが「あははは、なんだろキュンキュンくるよね。もうほんと出来る子にならないでね。このまんまでいいよね」、大久保佳代子さんが「いい子なんだろうね。ちゃんとしたお母さんお父さんが愛情をもって育ててさ、島から出て来てがんばってんの。器用にやらなくていいの」と言ったのも頷ける。

衝撃の卒業発表を経て

突然のお知らせになってしまうのですが、

8枚目のシングルをもちまして
私は欅坂46を卒業します。

お知らせ、335

3月7日に欅坂46公式ブログにて行われた卒業発表はまさに衝撃だった。

『欅って、書けない?』でニューハーフバーのママに「『やりたいこと』と『やった方がいいこと』どっちを優先したらいい?」と尋ねていたこと、ブログ「映画、325」で平手友梨奈との写真と共に「悲しくて哀しいのに観た後になにか心決めてる自分がいて」と映画の感想を綴ったこと、『欅って、書けない?』や『欅坂46 こちら有楽町星空放送局』への欠席が相次いだこと、『Nobody』のMVに参加しなかったこと、『黒い羊』のテレビパフォーマンスを欠席したこと…それらから卒業を危惧する声も挙がっていたが、僕は別の大きな仕事でも入ったのかと思っていた。欠席しがちな平手に代わり外番組への出演が相次ぎ、”欅坂46の顔”としての役割が大きくなっていたねるが卒業すると考えたくなかったという気持ちもあった。

この卒業発表の後、メンバーや関係者からねるの卒業に対する反応が相次いだ。公式ブログ、SNS、あるいは番組のコメント。その多くがねるの卒業を惜しむものであり、20歳での卒業発表を若すぎると指摘するものだった。

ねるの卒業発表でサイト更新のモチベーションを失いつつあった僕だったが、関係者がSNSに投稿したコメントをまとめることからサイト更新を続けようとした。それらのコメントは非常に好意的なものばっかりだったし、拡散したかったからだ。

しかしそんな中、もっとも近い関係者ともいえる『欅って、書けない?』(テレビ東京系)MCの土田晃之さんが語った内容は意外なものだった。少なくとも僕にとってはそうだった。

ねるはもっと早くにね、卒業とかしたかったんじゃない?

土田晃之 日曜のへそ

日向坂46デビューカウントダウンライブの楽屋でねるから卒業の話を聞いたという土田さんは、スタッフから「ねるのほうから少しお話いいですか?5分くらい」と話しかけられたときにすぐに卒業だと察したという。そのときねると話した土田さんは「もっと早くにね、卒業とかしたかったんじゃない?」「よく頑張ったね」と声をかけていた。

このエピソードを聞いたとき僕は「そうだったのか」と驚いた。なにかと苦労や嫌なこともあるだろうが、充実したアイドル活動を送っていると思っていたからだ。それはインタビューや取材記事の表面だけをすくった浅い認識に過ぎなかったのかもしれないが…

このラジオを聴いて思い出したのは、冒頭に引用した1st写真集『ここから』に掲載されたあとがきのことだった。

「なんでアイドルなんだろう。とよく思います」

長濱ねる1st写真集『ここから』(画像提供;講談社)

私は、上京して、アイドルになって、
すごく太ってしまった時期がありました。

(引用者中略)

自己管理が甘い、アイドル失格。
たくさんの声が聞こえてきて、
図星でしかないし、正論でした。

(引用者中略)

すっごくすっごく苦しかった。
そのことだけが、私の全世界でした。
ずーっと頭で考えていました。

(引用者中略)

なんでアイドルなんだろう。とよく思います。

長濱ねる1st写真集『ここから』あとがき

ねるはストレスに加え、長崎から東京という環境の変化によって太ってしまった。そのときに自分に向けられた「自己管理ができていない」「アイドル失格」という声に苦しんでしまったという。

「自己管理ができていない」ならマネジャーや関係者から指摘されることもあるかもしれないが、「アイドル失格」という厳しい単語が身内から出るかは疑問だ。それはあまりに攻撃的な言葉であり、思春期の繊細な女の子にかけられるべき言葉ではない。

Q:「メンバーのケアが大変なのではと思うのですが、いかがでしょうか?」

A:茂木徹(欅坂46チーフマネージャー)「SNSなど「見るな」と言っても見てしまうので、それはもうしょうがないです。でも、前は「こんなこと言われちゃってる」と落ち込んでいたのも事実ですが」

Quick Japan vol.135

僕がアイドルファンになって驚いたことの一つにアンチと、彼らの”熱心さ”があったが、残念なことにねるはアンチの多いアイドルだった。欅坂46公式YouTubeチャンネルに投稿された動画のうち、ねるに関係するものにはもっとも多くの低評価がついた。

そしてやり玉に挙げられたのはSHOWROOMだった。

理解されなくても仕方ない。うまく伝わらなくても仕方ない。

2017年6月に欅坂46の個人SHOWROOM配信がようやく解禁。解禁当初は賛否両論が聞かれたが、配信が始まってみると高評価ばかりが相次ぐことになった。

内気なメンバーが多い欅坂46では、個人配信が解禁されても複数人での配信が行われたことも大きかった。6月30日の齋藤冬優花の配信には織田奈那・志田愛佳・鈴本美愉・守屋茜・渡邉理佐が乱入。完全に楽屋ノリな配信に「メンバーたちの楽しそうな様子が見られてうれしかった」と思ったファンも多かっただろう。

この高評価を受けて、小林由依の配信には上村莉菜と織田奈那が乱入。さらに菅井友香の配信には土生瑞穂がチラッと顔を出したほか、齋藤冬優花・佐藤詩織・長濱ねるが出演した。

このSHOWROOMでの菅井への態度がネガティブに受け取られてしまったことで、ネット上にはその態度を否定的に捉える声が散見されるようになる。

オーディションの最終審査を受けずに加入したねるを”特別扱い”だといじわるな声を挙げ続けていた人にとって、この2時間余りのSHOWROOMが与えた影響は大きかった。3年9か月に及んだねるのアイドル活動を、この2時間で語ろうとするのはあまりにも残念なことだ。

けやき坂46追加メンバーオーディションのSHOWROOM審査が始まったこともあるが、これ以降欅坂46メンバーのSHOWROOM配信はめっきり数を減らし、写真集発売などお知らせがあるときやANNなど深夜ラジオの直前に行われることが多くなる。

僕は当事者でも関係者でもないし、正確なところは分からないが、この一件でねるだけではなく菅井もやりにくくなったことは間違いないだろう。

忘れとった!忘れとった!私は、よく笑う人だったわー。と。

ねるの性格に考えを及ぼす時に参考になるのはやはりねるの周囲の人達=メンバーだ。とくに長沢菜々香が公開したねるフォルダの写真はそれを如実に表しているように思える。

「吸血鬼」http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/diary/detail/14637?ima=0000&cd=member より
「ねるフォルダ更新中」より http://www.keyakizaka46.com/s/k46o/diary/detail/18923?ima=0000&cd=member

握手会でお願いされて…などのケースを除いてねるがこのような表情をファンに対して向けたことはないだろう。

バナナマン日村さん扮するヒム子が神宮球場での乃木坂46のライブにサプライズ登場した舞台裏が『乃木坂工事中』(テレビ東京系)で放送されたことがあった(乃木坂工事中#114)。その際、ヒム子に向けられた西野七瀬の満面の笑みを見て、「あれは日村さんだけ。俺らじゃ無理。引き出せない」という友人ファンのなんとも自虐的な意見を聞いたことがある。

ねるの場合、こういう表情を引き出せるのはメンバーだけだろう。そういうことを考えてみると、「謙虚ですごくいい子」というのは長濱ねるの一面に過ぎないのではないか?ということに思い至る。

「同世代にとってはクラスにいそうな親近感、上の世代にとっては今っぽくなさ、素朴さでノスタルジーを感じさせるキャラクターに魅力を感じ、テーマを“青春”に据えました」と語る担当者は、「東京では謙虚で控え目ですが、五島では野生児全開。島での長濱さんは人間味があってよりかわいらしいですし、幅広い年代の方々の心に突き刺さるのではないかと思います」と自信を深めていた。

欅坂46長濱ねる、“特例加入”から2年「自分にしかないものを見つけたい」【インタビュー後編】

1st写真集『ここから』の担当者が語った「人間味があってよりかわいらしい」という部分をいったい僕たちファンはどれだけ見ることができているのだろう?

たびたび長崎の自然の中で育ったねるならではのエピソードを耳にすることはあるが、アイドル長濱ねるに”野生児”のイメージはない。せいぜい『欅って、書けない?』(テレビ東京系)にてタガメを食べたことくらいだろうか。ただねる本人もそのギャップについては自覚しているようだった。

ー一方で優等生ならではの弱さを感じることはありませんか?
長濱「それはすごい感じます。振り切れていない感じがするんですよね。絶対にどこかで自分をコントロールしている自分がいて、自分の思ったままに行動できなかったり、はしゃぎきれなかったり、ふと我に返ったりすることが多くて、それって損してるなって思うことはあります。」

BUBKA 2017年12月号

幼少期を過ごした五島列島から都市部へと引っ越すと、小学校では「声が嫌い」とからかわれたりなど、周囲との関係を上手く構築できなかったという。その体験が自身の人格形成に与えた影響についてはこう語っている。

学校で集団生活を送ると「明るい気持ちを前面に出したり、自分の意見を言いすぎることって、まわりの子はどう思うんだろう」と考えるようになって。でも、アイドルは学校じゃないから、もっと自分を出そうと思ってます。

EX大衆 2017年11月号

だが、写真集の撮影のために久しぶりに五島列島へと帰ったねるは自分がかつて明るい子どもであったことを思い出す。ねるは自分が明るかった期間について「うーん。幼児。」(前出:EX大衆 2017年11月号)と冗談めいて語っているが、この再確認はねるの中でも大きな出来事だったようだ。

忘れとった!忘れとった!
私は、よく笑う人だったわー。と。

ふざけることが好きで人を笑わせることが好きで
おしゃべりすることが好きで。
あー。明るい子だった。と五島で思い出しました。
こんなこといつから忘れとったとやろうね。

長濱ねる1st写真集『ここから』

幼少期元気で活発だった子どもが、なにかと傷つきやすい思春期に大人しく目立たない存在になることはそんなに珍しいことではない。それにねるは元々考えるのが好きだという。

いや、でも考えるのが好きなんですよ。なりたい自分がいるのに、なんで自分は変われないんだろうって。「難しいな」という結論にしか至らないんですけどね。

OVERTURE 007

しかしねるはそんな”自分を隠すようになっていった”自身の性格と、自分の希望ではなく親の言う通りの進路に進むであろう将来に悲観し、大好きな乃木坂46の後輩グループのオーディションに応募することになる。

その結果は、最終オーディション辞退、特例での合格、唯一のけやき坂46メンバー、唯一のサイレントマジョリティー非選抜メンバー、唯一の兼任メンバー…というもの。土田さんが「こんなに喋らない(アイドルの)子たち初めて見た」と語ったことがあるほど静かな子たちのなかで、遅れて加入したねるが本来の自分を出していくことは難しかっただろう。

そのような環境の中でねるの「謙虚で良い子」と「明るい子」というキャラクターはなかなか一つに合わさっていかなかったのではないだろうか。メンバーにも敬語を使っていたねるのために欅坂46内で敬語禁止という決まりができたことや、ドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京)の撮影でメンバー同士の距離はどんどん縮まっていったが、それがファンにまで広がるには3年9か月という時間もねるの発信も充分ではなかった。むしろトップアイドルならではの影響力の大きさから、ファンに見せる表情と、メンバーや関係者に見せる表情の2つに乖離していったようにも思える。

18歳になって、
このお仕事を始めてからかもしれないけど、
仕方ない。って諦めることが多くなりました。

理解されなくても仕方ない。
うまく伝わらなくても仕方ない。
自分を知ってもらうのって、勇気も必要だし
すごくエネルギーが必要な動作です。

長濱ねる1st写真集『ここから』

つまり長濱ねるという人は、ふざけることが好きで、人を笑わせることが好きで、おしゃべりすることが好きで、調子に乗って決めポーズをして写真に収まるし、ふざけて目つきが悪くなったりもするし、軽口を言い合ったりもする「謙虚ですごくいい子」ではないのか。ファンが見ていたのはねるの本当に少しの部分ではなかったのか。そういうことを考えてしまう。

『欅って、書けない?』(画像提供:テレビ東京)

(『欅って、書けない?』では思い出用として撮影された、ねるがふざけて歌う動画が放送されたこともあった。)

土田さんが卒業を伝えたねるにかけたという「もっと早くにね、卒業とかしたかったんじゃない?」という言葉から、2つのキャラクターの間で悩み苦しむねるの姿が透けて見えるような気がした。

特例での加入を経て、東京でアイドルとして新たな一歩を踏み出したねる。2016年6月のインタビューで答えていた、ねるのなりたい自分像が印象的だ。

—なりたい自分はどんな自分なんですか?
長濱「何を言われても気にしない人。私は末っ子なので親からどうしたら怒られないか察しながら生きてきたんです。」

OVERTURE 007

今度の進路について

同じく欅坂46を卒業した今泉佑唯は女優の道へ進み、志田愛佳はモデル活動を開始、米谷奈々未は学業に専念と三者三様の道を選んだ。しかし、ねるは卒業後の進路についてとくに言及していない。

卒業後の進路について言及しなかった先輩アイドルには元乃木坂46の深川麻衣がいる。深川は卒業後女優を志していたが、もし女優の道に進めなかった場合、ファンを悲しませてしまうという理由で進路を明らかにしていなかった。

ただ、卒業後の進路を“女優”と公言しませんでした。女優の道に進めるあてはまったくなかったですし、どうすれば良いかも分からなくて。乃木坂46という大きなグループから1人で外に出た時の不安、卒業後の目標を女優に定めるアイドルの方も多いので、私は埋もれてしまうかもしれないという不安。それに『女優になる』と公言して、結局なれなかったら、応援していただいたファンの方を失望させてしまうかもしれないと思ったんです

日経エンタテインメント! 2016年12月号

ねるは進路について明言したことはないが、過去のインタビューでは将来やりたいことについて漠然と答えている。当初は海外生活への憧れや、国際的な仕事について語ることが多かったが、将来像も徐々に変化してきているようだ。

2016年6月

いずれは海外に移住してみたい。(引用者中略)国連やユニセフに興味があるから国連の公用語であるフランス語を勉強したいなと思って、今も頑張って高校に通っています。

日経エンタテインメント! アイドルSpecial 2016夏

2016年12月

欅坂46としての活動もありますが、個人的な将来の夢はありますか?
長濱「(引用者中略)もしチャンスがあれば大学にも行って、国連ボランティアや、難民高等弁務官のインターンシップにも参加できたらいいな、と。」

UTB+ (アップ トゥ ボーイ プラス) vol.35

2017年9月

ゆくゆくは、
図書館で働きたいな〜とか。

のんびり本に囲まれて過ごして
本の修理したり
子どもたちに読み聞かせしたり
その方に合わせてぴったりな本をおすすめしてみたり。


わー。想像するとキラキラしてるな。


なんていうのかな。
宝石的なキラキラじゃなくて、
木漏れ日を見上げたときのキラキラの方、!


あ、でもね
移動販売のパン屋さんもしてみたい!

手作りのパンをね、車で売るの!
その匂いで子どもたちがたくさん来たりして。
はいどうぞってお釣り手渡したりして。

煌き、233

2017年10月

ー最近のブログで将来の自分の妄想として「図書館で働く」「移動販売パン屋さん」と書いてました。
「はい。やりたいことがいっぱい増えたんですよ。」

EX大衆 2017年11月号

2018年2月

・6年後の自分

図書館で働きたいです。(引用者中略)司書の方と仲良くなって、その方にすごく憧れていたので、自分もそうなりたいなって。小さい子も好きなので読み聞かせもしたいんです。だから本屋さんじゃなく、図書館がいいんです。

CM NOW vol.191

ねるの憧れの存在・伊藤万理華も2017年12月をもって乃木坂46を卒業した。「やりたいことがいっぱい増えた」と語るねるも憧れの人と同じように芸能活動を継続するだろうか?ねるの今後については7月30日深夜に放送される「長濱ねるのオールナイトニッポン0」で語られるとのことだ。ねるの芸能活動継続を期待して待ちたい。

“天才”平手友梨奈とセンターを目指し続けた今泉佑唯の関係性

今回は長濱ねる卒業に関してのコラムでしたが、以前には今泉佑唯卒業の際にもコラムを書いています。よかったらこちらもどうぞ。

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